ここにも散々書いたが、寝正月の暇つぶしのつもりで買い始めてどんどんはまってしまった河合隼雄先生の本もやっと一段落ついた。短い期間にたくさん読むと、おっしゃっていることの意味がどんどん繋がっていく感があり、新しい発見がいっぱいあって、自分的にはかなり有意義であった。ここ1ヶ月ほどで読んだ本を記念にまとめておこうと思う。
●『対話で探る「新しい科学」』講談社+α文庫、2001年(1994年出版されたものを文庫化)
共時性や、(客観的観察ではない)参与的観察、研究者や研究対象の主観性に正面から取り組むことなどといった、従来の科学的パラダイムから見れば白眼視されることが確実なもろもろの事柄について、さまざまな分野で第一級の成果を残している科学者の方々と対話をする。容赦なく難しいが、刺激もそれだけ大きかった。
●『こどもはおもしろい』講談社+α文庫、2005年(1995年出版を文庫化)
現場の小中高の個性的な先生方との対話。子どものおもしろさを引き出す先生の工夫、力量に感激! すごく読みやすいのに、もの凄く考えさせられた
●『ユングと心理療法』講談社+α文庫、1999年(1986年出版の『心理療法論考』上巻を文庫化)
もともとは専門家のために学術誌などに発表した論文をまとめて出版したものだそうだが、記述が凝縮されている分、河合先生の全体的な主張がえらくわかりやすかった。が、かなり難しめ。続巻は同文庫の『日本人と心理療法』。こちらは売り切れていたのでまだ読んでない。
●『カウンセリングを語る(上)』講談社+α文庫、1999年(1985年出版を文庫化)
四天王寺というお寺のカウンセリング研修講座における先生の講演記録。河合先生自身は講義や講演をそのまま書籍化されることにものすごくためらいを感じておられるそうだが、おもしろい、頭から読んでスラスラ理解できる、内容が深い、ご自身の事例の話が(おそらくは不本意ながら)諸処に出てくる、といった点で、書き下ろしの本には絶対に無い価値も含んでいておすすめ。下巻は売り切れだったのでまだ読んでいない。
●『人の心はどこまでわかるか』講談社+α新書、2003年
河合先生ご自身ともお付き合いのある、病院等で心理職に携わっている方々から改めて募った質問に答えるという形で記述が進んでいく内容。同業者に対するものなので、他の本よりは実際的な内容が多い。また、職業意識というようなことも関わるためか、質問者に対して直接向けられたものではないが、○○ではダメだろう、みたいな厳しめの発言も多い。当該の仕事の大変さがしみじみと伝わってくる本。
●『こころの天気図』三笠書房・知的生きかた文庫、1994年(1990年出版を文庫化)
毎日新聞「はないちもんめ」紙上で連載されていた河合先生の話をまとめたもの。聞き手は児童文学者の工藤直子さん。和気あいあいと話が進んでいる様子がよくわかります。難しい話でもまっすぐに相手に届く言葉で話せる先生の力量には圧巻。っていうか、こちらもずいぶん参考になった。ややほぐしすぎて、河合先生自身の心理学についての全体の主張はぼやけるようには感じたが、この本はこの本で、他にはない価値があります。
●『河合隼雄全対話(2)』第三文明社、1989年
さまざまな雑誌や機会において行われた超一流の学者先生との対話をまとめたもの。コーランの翻訳で名高い井筒俊彦先生と、ユング派の中でも急進派とされるジェームス・ヒルマンさんとの鼎談はすごかった。日本の庭の話なども出てきます。
●『物語と人間の科学』岩波書店、1993年
1987年から1991年にかけて、さまざまな機会で行われた講演をまとめたもの。専門家向けの講演や大学での講義が主。表題には「物語」とあるが、あとがきによると、1987年所収の講演では、先生の考えはまだ、「物語」というキーワードには結実していなかったそうである。
先生の京都大学での最終講義も含まれている。布置や共時性といった事象を心理療法家としての先生がどれほど重要視し、把握しようと努力しているかということがよくわかる。演題はずばり、「コンステレーション」(=布置)。たとえ専門家向けとはいえ、先生の講演や講義はほんとうにわかりやすい。
●『昔話と日本人の心』岩波書店、1982年
見るなの座敷、鶴女房、浦島太郎といった昔話を、日本人の自我が無意識のしがらみから自立性を得る過程という筋で論じたもの。ご自身が学ばれたユング心理学を、日本人に合うものとして再構成することがライフワークであったという点では、河合隼雄先生の最重要文献の一つということになると思う。
一般に受け入れられている考えとの違い、先行的な研究との関連等、配慮すべきことが多すぎて、全般の筋を読み取るのは相当しんどかったが、面白かった。
蛇足ですが、付録に昔話もちゃんと付いています。関敬吾さんという昔話研究で有名な民俗学者が編集した昔話集からのものが多いですが、我々が通常よく知っている「まんが日本昔ばなし」等で知っている話に比べて衝撃的だったり残酷だったりする話が多くはっとさせられました。
●『対話する生と死』だいわ文庫、2006年(1992年出版の本を文庫化)
表題に「対話」とあるが対話集ではない。雑誌等で発表された文章を「生と死」というテーマに関連が深いものという方針で編集したもの。とはいえ、分量・内容ともかなりばらつきがあり、やや読みにくかった。
・・これで読書は一段落、のつもり。
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